第1回 日本でオンライン診療・服薬指導が普及しない理由
本連載は、小売業のICT活用を小売業、テクノロジー企業双方に支援しているコンサルタントであり、薬剤師でもある郡司昇が、ヘルスケアとリテールの融合をデジタルトランスフォーメーション(DX)軸で考察していく連載です。
ヘルスケアの範囲は曖昧
とある大手雑貨チェーンの役員と雑談をしている際に、ヘアケア商品がヘルスケアカテゴリに入るという話を聞いて驚いたことがある。ドラッグストアでは、OTC医薬品、ドリンク剤などの医薬部外品、健康食品といったカテゴリーをヘルスケアと呼ぶことが多い。
どちらも小売業が特定の商品群をヘルスケアと呼んでいるという点では変わらない。また、無印良品では比較的ヘルスケア的商品のSKUが少ないためか、ヘルス&ビューティというカテゴリーとなっている。本来、健康の維持や増進のための行為をヘルスケアという。また、”Health care”の日本語訳は健康管理、(広義の)医療をさす。ただし、どこまでをヘルスケアと呼ぶかは、小売業の例を見るまでもなく難しい。
ヘルスケアDX背景①次世代医療基盤法
ヘルスケアDXが対象とする市場でもっとも大きいものは、50兆円を超える医療介護保険市場である。ヘルスケアDXへの期待が高まった背景には、次世代医療基盤法(2018年施行)が挙げられる。
次世代医療基盤法の目的は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関し、匿名加工医療情報作成事業を行う者の認定、医療情報及び匿名加工医療情報等の取扱いに関する規制等を定めることにより、健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出を促進し、もって健康長寿社会の形成に資することを目的とする。」とある。
長文でスッと頭に入ってこないが、
- 目的は「健康長寿社会の形成」であり、
- そのために「健康・医療に関する研究開発及び新産業創出」を促進する必要がある。
- 手段として「匿名加工医療情報」関連の整備をする。
と分解すると目的と手段が明確となる。
これにより、個人情報保護法の特例として、医療情報の匿名加工や、患者が情報提供を後からでも拒否できるオプトアウト方式によるデータ利活用の道が開けた。
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